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君に想いを、剣に誓いを。(第一部)

君に想いを、剣に誓いを。(第一部)001 プロローグ『前世』

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《紅き残酷な救い》
 視界の遥か先に城壁を望む位置にその青年は立っていた。黒髪に金色の瞳。そして、鮮やかな紅の鎧を纏った青年だ。顔立ちは整っており、その異色の双眸は城壁の手前に陣取る軍勢を鋭く見据えていた。その数およそ三万。

 その青年の背後にはおよそ銀の甲冑に身を包んだ完全武装の騎兵三千が控えている。そして、青年の横には一人の女性が立っている。濃紫の髪に銀色の髪。着ている服は銀の胸鎧と籠手という軽装。

「アセリア、この戦に救いはあるのか?」

 青年は傍らの女性アセリアに問い掛けた。その瞳は前方の軍団を見据えている。アセリアは青年の横顔を見詰め、

「早急に収めることこそ、救いとなるでしょう」
「……そうか」

 青年は苦悩の表情で俯き、それからしばらくしてから顔を上げた。その顔に苦悩はなく、決意を湛えた双眸で軍勢を見据えた。

「これより、侵攻を開始する。速やかに敵軍を打ち破り、敵国の意思を挫く。それが我らに与え得る最大の救いであることを信じよッ!」

 軍勢が呼応する。その声は空気を震わせた。青年は腰の鞘から剣を引き抜く。薄紅い金属で作られた鉈のように厚い刃を持つ短剣。彼はそれを頭上に掲げ、

「全軍、進撃せよッ!」

 勢いよく振り下ろした。それに応じ、銀の軍勢が鬨の声を上げて動き出す。紅衣の青年も黒の毛並みを持つ駿馬に跨り、手綱を握る。黒馬は心得たように大地を蹴り、軍勢の先頭へと躍り出る。

 無数の蹄が大地を踏み鳴らし、地響きを立てる。軍勢の先頭が敵軍までおよそ三百メートルまでを切った時、弓に矢を番え、弦を引き絞る様子を視認した。直接狙いを付ける訳ではなく、斜め上に向けた無数の弓兵がいる。あれらが解き放たれれば、こちらに向かって矢の雨が降ることだろう。しかも、矢の先端には術式の光が灯っている。効果は知らないが、攻撃系であることに間違いはないだろう。

「アセリア、頼む」
「わかっております」

 並走するアセリアの方を向かずに声を掛けると、打てば響くように返事が返る。彼女は疾走する馬の手綱を手放し、レイピアを捧げ持つ。


“――彼の空に飛するは王伐の仇矢。我、王を護する者なりて、王射す刃を尽く打ち払う”


 詠唱に呼応し、レイピアの柄に象嵌された紫色の宝玉を中心に巨大で複雑な術式が展開する。

 その様子を見て、先手を取ろうとしてなのか、敵軍より無数の矢が放たれた。弦鳴りの音に続く空を裂く音。一つや二つなら大したことではないが、万の単位で飛んで来ればそれはもはや死神の羽音にも聞こえる。だが、銀の軍勢は空を見ない。気付いていない訳ではない。彼らは経験から知っていた。何時もの繰り返しだ。敵が矢を放ち、アセリアがそれを防ぐ。二射目を放つ前に敵に辿り着く。それだけのことだった。だから、彼らは恐れない。ただ、前へと進む。

 アセリアは放たれた矢を見てもなんら表情を変えることはなかった。軍が前へ進むための露払いをする。彼女にとってはそれだけのことだ。だから、詠唱が途絶えることはない。静かな、しかし、朗々とした声で唱える。


“――此の意に従い、天に潜みし視えざる数多の刃を振るわんッ!”


 詠唱が終わり、術式が眩いまでの光を放つ。膨大な魔力が集束し、そして爆発的な勢いを持って拡散していく。

 天が揺らいだ。そう感じるほどの衝撃が地上を襲い、遥かな頭上では軍勢に降り注ごうとしていた矢の雨がその姿を忽然と消していた。

「邪魔するものは何もない。各自、己が力を振るえ」
「応ッ!!」

 軍勢が唱和し、空気を震わせる。残り百メートル。前面に展開する歩兵が武器を弓から槍に持ち替え、後ろに控える騎兵と歩兵は二射目の矢を番え、すぐさま放つ。だが、それらは各自が展開した術式に阻まれて大半は意味を為さなかった。しかし、それでも矢を防ぎきれなった幾人かの騎兵が鎧ごと矢に貫かれ、その内の数人が落馬し、残った数人は矢を体に突き刺したまま突っ走る。

 銀の軍勢は恐れない。ただ真っ直ぐに突っ込んで行く。方陣を組む敵に対し、騎兵団は楔形の陣を組む。各自さらなる防御術式を展開し、突撃槍を構え、


 ――激突


 残りの百メートルを走り切るのにさほどの時間は掛からなかった。先頭を疾駆していた騎兵が歩兵の構える槍へと突っ込んで行く。攻撃の力を纏わせた槍と防御術式が接触し、激しく光を放つ。

 拮抗したのは一瞬だった。完全装備の銀の騎兵団に比べ、敵の歩兵はあり合わせの装備を申し訳程度に纏ったようなものだった。その上、敗戦に次ぐ敗戦。戦開始の当初は押していた筈が、何時の間にか形勢を逆転され、もはや残された軍もここに集っているのみ。この場所を死守しなければならないとは思ってはいても、疲労や焦りはそれを支えてはくれない。なによりも、彼らが相対しているのが逆転の契機を作り、ここまで彼らの国を追い詰めた将の率いる精鋭とあっては、もはやこれは最後の悪足掻きに過ぎない。

 事実、紅衣の男は真っ先に歩兵の陣を突破し、周辺にいた敵兵を軒並み切り伏せていた。彼の通る跡には立っている者はなく、血の道が出来ている。だが、不思議なことに死んでいる者はなく、一様に腕や肩、足を斬られて動けなくなっているだけである。

 彼は前を見据える。視線の先には銀の軍勢までとはいかないものの、機甲を組み込んだ黒一色の甲冑に身を包んだ騎兵が待ち構えていた。彼が見るのはその中心。周囲の軍勢と同じく黒の甲冑を纏ってはいたが、兜を着けておらず、肩に指揮官を示す金の房飾りが見える。

「アーデルッ!」

 紅衣の男が咆える。そして、馬から飛び降り、一歩を踏み出す。それに対して黒の騎兵が進路を塞ぐように陣取る。魔術と機械を融合させた技術を持つ彼らの国だが、魔法に特化した技術が劣るわけではない。
 黒の騎兵がそれぞれの武器を構え、迎撃の態勢を取る。

「邪魔だ」

 駆けながら、右の腰に吊るしていた鞘から右手のものと同じ分厚い刀身を持つ短刀を抜き放ち、

「忌剣・散の太刀ッ!」

 舞うように剣が奔る。立ち塞がっていた騎兵の武器が切断され、鎧は可動部を的確に潰されている。圧倒的な強さを見せつけ、ただの黒い壁となった彼らを足蹴にして、踏み越えて相手の指揮官であるアーデルに迫る。その間も立ち塞がろうとする者は現れたが、男の圧倒的な強さと、後から追い縋ってきた銀の騎兵団、それに加え、アセリアの魔術による援護で倒されていく。

 遮る者はいなくなり、紅衣の男とアーデルが対峙する。無論、アーデルの背後にも黒の騎兵はいたが、アーデルがそれを抑える。

「久しいな、オルカ」

 アーデルが静かに口を開いた。彼は自ら馬を下り、紅衣の男・オルカと視線を合わせる。先端だけが黒く染まった白の髪に濃紫の瞳。整った顔立ちだが、深く苦悩が刻まれており、実年齢よりも年を取って見える。
 オルカは毅然とした表情でアーデルを見据える。

「なぜ降伏しない?」
「…………」

 アーデルは答えなかった。黙ってオルカの金色の瞳を悲しげに見つめ、やがて、

「今さら止まると思うのか? この馬鹿げた戦争が」
「ならば、早々に引導を渡してやる。どうせ、どちらかが滅びるまで続くんだろうからな」
「そうだな、それがいい。だが、我も大人しく殺されてやる謂れなどないのでな……全力で抵抗させてもらうぞ」

 アーデルは馬の鞍に取り付けてあった機甲の槍を掴み、重心を低く構える。オルカは両の腕をだらりと下げて『構える』。

「無構えか……貴様も本気のようだな」
「ああ」

 アーデルの苦笑にオルカは無表情に答えた。アーデルは一度俯き、そして、再び顔を上げた時には笑みは消え、鋭い眼差しでオルカを見据えていた。

「いざ」

 小さな呟きと共に、アーデルの体は放たれた矢の如き速さでオルカに肉薄し、機甲の槍を突き込む。オルカはそれを受けず、ぎりぎりで躱し、反撃の刃を繰り出した――

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