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グランベル魔法街へようこそ

グランベル魔法街へようこそ010 ユウとカエデ

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 ユウは学院の敷地を放浪していた。
 正直言ってやることがない。が、かと言ってつまらないわけでもない。
 カロンにもらった精霊石の入ったペンダントを大事に首からかけ、そのペンダントヘッドを握り締める。
 そうして、石の存在を意識しながら見る景色はとても幻想的だ。淡く色付いた靄のようなものが立ち込め、世界を綺麗に彩る。

 だが、不満が残らない訳ではない。なんといっても、カロンはユウに魔法の使い方を教えてくれないのだ。折角精霊石をもらったというのに、これでは無用の長物ではないか。
 そんなことを思いながら、舗装された道を逸れ、春に咲くだろう草花の蕾が膨らみかけた草原へと足を向ける。
 ユウは草原の半ばまで歩いて行くと、蕾を傷付けないように注意しながら、裸足になって寝転がった。
 目は閉じない。きっと、目を閉じれば眠ってしまうから。それほどまでに安穏としたこの景色。ペンダントにそっと手をやり、蓋を開く。
 四色の光が灯る不思議な石がそこにある。

 リックが語った話だと、それぞれの色に魔法の属性が関係しているらしく、つまるところ、この石は四属性すべてを備えているということになる。まあ、第二等級ともなれば当然でもある。とある精霊から渡されたという石。はたして、その精霊とカロンの関係はなんだったのであろうか。
 疑問はある。それに、本当にこの石の持ち主が自分でいいのだろうか、ということも。もちろん、共鳴光は今もほのかに灯っていて、ユウの中に何かが流れ込んでいるのが確かに感じられはするのだけれど。
「でも、ね……」
 フロイス市議会連邦の西岸に位置する港町で生を受け、港の食堂の娘として生きてきた。七歳、つまり、七年前にセシリアと名乗る魔導師――魔法使いの上位職の少女と出会い、魔法に憧れただけの少女。それが、ユーロシア・アルコットだ。つまり、セシリアと出会うことさえなければ、ユウは今でも食堂で給仕をしているだけの、どこにでもいる娘だったということだ。

 ユウはカロンの背中に見た翼を思い出す。いや、よくよく思い返してみると、あれは翼じゃない。翼の形に酷似した魔法陣。他の生徒を見たときには、そんな特殊な形状をした者は見当たらなかった。あれは一体なんだったのだろうか。
 カロンへの疑問は探せば切りがなくなるだろう。フルネームからして、恐らく貴族の筈なのに、旧魔法街の片隅でひっそり暮らしていたり、四年前に学院を退学になったりと。謎が多すぎる。その反面、彼の性格は大体わかった。歯に衣着せぬ物言いだが、逆に言えば、褒めるときも直接的な言葉を用いるから、困ったものである。また、魔法の技能も人並み外れているようだし。
「…………」
 ユウにとってカロンはどういう存在なのだろうか。魔法を教えてくれた親切な人。でも、それだけじゃない気がする。もっと何か、違う感情。
 もやもやしていて、言葉に出来ない。
 そんなことを悶々と考えていたせいか、人の気配に気付かなかった。

「ユウちゃん」
「あっ、ひゃ、ひゃい!」
 噛んだ。
 慌てて起き上がって声を掛けてきた人物を見ると、カエデだった。いや、見なくても声でわかった筈なのだが、慌てすぎて頭の中が真っ白になっていた。

「どうしたんです? そんなに慌てて」
 穏やかに微笑みながら、カエデが隣に腰を下ろす。
「なんでもないっ」
 強い語気で言うと、カエデは頬に手を当て、困ったように笑う。
「カロンさんのことですか?」
「うぐ……」
 お見通しだったらしい。ユウは隣に座り直し、膝を抱える。

「カロンって、あたしにとってなんだろうって、そう思って」
「ユウちゃんにとってのカロンさんですか。まあ、端から見れば師匠と弟子、なんでしょうけど。でも、そういうことをききたいわけじゃないですよね?」
「うん。どっちかというと、感情の話。どう……思ってるか」
 カエデは穏やかな笑みを浮かべ、
「それは、答えを焦らなくてはならないものですか?」
 問われ、ユウは考え込む。しかし、やがて首を横に振った。

「では、急がなくてもいいと思います。多分、それはゆっくりと心になじんでいくものでしょうから」
「まるで、答えを知ってるかのような言い方だよ、それ」
「わたしにだってわかりませんよ。ただ、そういう類の感情だ、ってことぐらいしか」
「ふーん。あ、でもさ、カエデにとってフォルさんはどういう人なの?」
 興味本位で訊いてみると、彼女は少し眉を寄せてから、
「父替わり、というのが正しいのかもしれませんね。本当の父は風来坊で、いつも別の場所にいることが多いものですから、その分フォルさんが面倒を見てくれたので。まあ、家族みたいなものです」
「家族か。家族……」

 自分とカロンに当てはめてみるがしっくりこない。父と子というには歳の差は近いし、かと言って兄と妹というのも。いや、当たらずとも遠からずか。ある意味納得してしまったユウはくすりと笑う。
「兄かも。あたし、男兄弟ってほしかったんだ。いつもはぶっきらぼうでも、いざとなると頼りになる、そんな兄弟が」
「まあ、そういう意味ではカロンさんは的確ですよね。面倒見がいいですし」
「そうなんだよね。カロンってば、面倒見が良くて、料理もそれなりにできて……ちょっと性格悪いけどっ」

 考えてみると、それほど欠点と言える欠点がないことに気が付き、言ってる途中で恥ずかしくなった。
「なんでもできちゃうんだよね、カロンって。なんか、付け入る隙がないっていうか」
 それはなんだか悲しい気がする。結局、ユウとはカロンにとってなんなのか。暇つぶし、の線もあるけど、それはあんまりにも悲しいので考えない。
「でも、カロンさんはユウちゃんのことすごく大事にしてますよね」
「そお? そんな気、ぜんぜんしないけど」

 まあ、随分世話を焼かれている、とは思うが師匠と弟子以上のものではない気がする。
「自分ではわからないものですよ」
「そういうカエデも、カロンには可愛がられてるじゃん」
 拗ねた口調でからかったつもりが、彼女はほんのり頬を染めて、
「可愛がられてるなんて、そんな……」
「あれー……」
 なんか雲行きが怪しい。
「カエデ、もしかして――」
「い、言わないでください! わたしにもよくわからないんですからっ」
 物凄く慌てられた。もしかしたら脈あり、なのかも知れない。そう思い、カエデとカロンが好きあってるところを想像しようとしたら、胸がざわついた。
「…………」
 その感情をうまく処理できなくて、カエデの方もまだ慌ててるのか、言葉はなく、沈黙が二人の間に下りた。

 ユウは寝転がって、空を眺めた。高く澄んだ蒼い空。
「……カエデって魔法使えるよね?」
 しばらくして、ユウは言葉を発した。カエデは少し驚いたようで、
「ええ、家柄として、子供の頃から。ユウちゃんはまだ?」
「うん。こないだ精霊石もらったばかりで、実際に使ったことないし、カロンも教えてくれなんだ」
 カエデはその言葉に少し考え込んでから、
「カロンさんの魔法の使い方は一種独特なものがありますからね。正直、あの人に習うとその癖のせいで後に他の人に習う時に苦労しますよ、きっと」
「癖? あたしはそれすらもよくわからないんだけど……」
「わたしは環境が少々特殊で、使うよりも識るほうに重きを置いていますから」
「分析系ってこと? それはそれでうらやましいよ。そういうのって、研究室入りに役に立つんでしょ?」
「まあ、それは確かなんですけど……」
 言葉を濁したカエデの顔を見ると、やはり浮かない顔をしている。

「あたし変なこと言った?」
「いえ、そういうわけではなく。わたし、研究室に志望するつもりはないんですよ。どちらかというと、地方の守備隊を望んでいるので」
「しゅび……たい」
 不思議な気がした。彼女なら、せめて教官の職に進むと思っていたから。
「どうして、とは聞かないんですね?」
「聞いてもいいなら聞くけど……でも、聞かれたくなさそうだから」
「聞かれたくない、というよりも」
 視線がふっと遠くを見る。
「言葉がわからないんですよ、まだ」
 いつも浮かべている微笑みが、今は儚げなものに見え、ユウは横に投げ出されていた彼女の手をそっと握った。

「大丈夫だよ。みんないる。あたしも、カロンも、それにフォルさんも。リックだっている」
「ありがとうございます」
 その顔に浮かぶ確かな安堵を見て、ユウは朗らかに笑う。
「あたしはあんまり役に立たないかもしれないけどさ。でも、聞くだけならできるから」
「いえ、わたしはユウちゃんに出会えてほんとによかったと思ってます。こんなにも、安心できますから」

 カエデはユウの手を握り返し、そして、唐突に寝転がった。
 顔が近くなり、彼女の息遣いが感じられる。同性ながら、どきりとしてしまうような愛らしさ。
「ほんと、反則だよ」
 ユウは笑い、カエデに抱きつく。
「きゃっ――ちょっと、いきなりなんですか。びっくりしましたよ」
 びっくりしたと言いながら、それでもユウを受け止めてくれるぬくもり。時折儚げな表情をする彼女を、ユウは絶対に離さないと心に決めた。
 しかし、この胸の大きさはいかんともしがたいな、とも思い、その胸に半ば埋もれるユウだった。

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